「相続が進まないのはなぜ?」
「遺産分割が進まないときはどうしたらいいの?」
「相続手続きが長引くとどうなるの?」
このような悩みをお抱えではありませんか?
ただでさえ面倒な手続きが多い相続の話し合いがスムーズに進まないと、心穏やかではいられないですよね。
相続協議自体に法的な期限はありませんが、話し合いが長引いてしまうと、心情的な対立や新たな問題が生まれてしまうことがあり、デメリットが多いです。つまり、相続の手続きがさらに長引くことがないように対処する必要があります。
そこで、この記事では、法学部で法律を専門的に学んだ私が、
- 相続が進まないパターンと原因
- 相続が進まないときの対処法
- 相続が進まないまま長引いた場合のデメリット
について解説します。
この記事を読めば、相続が進まない原因が分かり、スムーズな話し合いへの道筋が開けるでしょう。
ぜひ最後までお読みください。
相続が進まないときはどうする?概要を30秒でサクッと解説
結論から言うと、相続が進まないときは、弁護士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。
もし相続を進める上で、何もトラブルが起こっていない、トラブルが起こりそうもないという状況ならば、相続手続きは自力で進めることも可能です。
しかし、相続が進まないということは何かしらの原因があり、そのトラブルを自力で解決するのはとても大変で、大きなリスクを負う恐れがあります。
相続が進まない原因を整理した上で、何らかのトラブルがあるならば弁護士に相談しましょう。そして、必要ならば裁判所の手続きを利用して解決を図ることになります。
相続手続きが長引いてしまうと、様々なデメリットが発生します。
早めに専門家に相談することが、スムーズに安全に相続手続きを進めることへとつながります。
相続が進まないパターン5選
相続が進まない場合とはどのような状況があり得るのかを知ることで、自身の状況を理解し、相続が進まない原因を整理できます。
そこで、ここでは相続が進まないよくあるパターンを5つ紹介します。
- 連絡を取れない相続人がいる
- 遺産の対象となる財産が確定できない
- 相続人同士が不仲である
- 被相続人に再婚歴がある
- 財産の評価ができていない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.連絡を取れない相続人がいる
連絡が取れない相続人がいる場合、連絡の取れる相続人だけで遺産分割協議は進められません。
なぜなら、遺産分割協議の当事者の一部を除外してなされた分割協議は無効となってしまうからです。
そのため、何らかの方法で連絡を取ってから遺産分割協議を進める必要があります。
具体的な方法として、
- 郵便
- 電話
- 戸籍調査
などの方法が考えられます。
まず遠方に住んでいるなどの理由で連絡が取りにくい場合は、郵便や電話などの方法で連絡を取ることになります。しかし、連絡先や住所を知らない場合は、調査をする必要があります。本籍地の役所に申請をして、住所を調べていきましょう。
その後、住民票上の住所に手紙を送り、相手方の反応を待って、対応を考えることになります。
このように、遺産分割協議を進めるためには、まずは相続人全員と連絡を取れるようにしなければなりません。
2.遺産の対象となる財産が確定できない
ある相続人が、相続財産についての情報を、他の相続人に対して開示してくれない状況では、相続協議を進めることはできません。
遺産分割の対象財産が決められなくなり、協議を進められなくなるからです。
よくある例として、被相続人である親と同居していたひとりの兄弟が親の遺産を管理していて、他の兄弟はまったくその遺産について把握していないという場合があります。
遺産の対象となる財産を確定させるため、相続人全員が相続財産についての情報を把握できるようにしましょう。
3.相続人同士が不仲である
相続の当事者たちが不仲であると、遺産分割協議は進みません。
遺産分割は当事者間の協議で話を進めるものであるからです。
相続人同士が不仲であると、各相続人が意見を激しくぶつけ合い、協議がまとまりません。そして、不仲ゆえに話し合いが不可能になり、何年も解決しないことがあります。
円滑に話し合いを進めるために、当事者間の人間関係には注意をしましょう。
4.被相続人に再婚歴がある
被相続人に再婚歴があることは、相続が進まない原因となりやすいです。
前婚と後婚の各家族間で、相続に関する争いが起きやすいからです。
争いが起きる原因として、死亡時の家族に財産を引き継がせるとの内容の被相続人の遺言がある場合、前婚の子供についても遺留分が認められるというルールがあります。このルールにより、前婚の家族も相続できる財産があることを強く主張できるのです。
また、被相続人の再婚による家族同士という関係上、話し合いの中で感情的な対立が起こりやすいことも、争いが起きやすい原因です。
被相続人に再婚歴がある場合は、各家族間の話し合いは進みづらいことを理解しておきましょう。
5.財産の評価ができていない
財産の評価ができていない場合、相続の協議は上手く進みません。
相続財産の中に、不動産、非上場会社の株式などがあると、遺産としての価値を適切に評価する必要があります。しかし、その価値を把握できていない場合、推測の域を出ない議論で時間が過ぎていってしまうことが多いです。
例えば、ある不動産の価値について、適切に時価を査定できていないまま協議をすれば、その不動産の価値そのものについて争いが生まれやすくなります。
このように、相続の協議を進める上では、財産の価値評価をしっかりと行う必要があります。
しかし、時価の適切な査定は簡単ではありません。弁護士などの専門家を頼り、確実に手続きを進めることをおすすめします。
相続が進まないときの対処法
相続が進まないときの対処法としては、大きく分けて3つ考えられます。
- 専門家に仲介と補助をしてもらう
- 裁判所の手続きを利用する
- 自力で対応する
ぜひ参考にしてみてください!
1.専門家に仲介と補助をしてもらう
相続が進まないときは、相続専門の弁護士に間に入ってもらう方法が有効です。
相続の協議では、当事者間の感情がぶつかり合い、冷静な話し合いができないことがあります。しかし、第三者の弁護士が仲介することで、当事者は直接話をせずに済み、ストレスを減らせます。
また、相続は個別の具体例における判断が重要です。弁護士が法的な手続きや書類手続きの代行をしてくれる点に加え、専門家の知識と判断は迅速な解決につながりやすいでしょう。
さらに、相続問題に精通した弁護士であれば、遺産の調査が可能です。このことから、
- 財産価値の評価を正確に行える
- 対象財産の情報開示請求を行える
などといったメリットが挙げられます。
このように、専門家に協議の仲介と補助をしてもらうメリットは多いです。相続が進まないならば、ぜひ一度相談してみましょう。
2.裁判所の手続きを利用する
相続が進まないときの対処法として、家庭裁判所で調停・審判手続きを行うという方法があります。
公的機関による判断の影響は大きく、協議を大きく前に進められる可能性が高いからです。
例えば、次のような場合に、強制的な解決を図ることができます。
- 協議に参加してくれない当事者がいる場合
- 情報を開示してくれない場合
- 遺産を独占しようとする相続人がいる場合
協議がまとまらない場合に、公正な判断を聞けるという点も、メリットでしょう。
また、調停では、調停委員の仲介のもと、相続人全員が納得できる形の合意を模索します。
もし合意が成立しない場合、裁判所が審判を行い、遺産分割の内容を決定します。
このように、裁判所の手続きを利用して相続の協議を進めていくことは、とても有効です。
3.自力で対応する
相続手続きを自力で対応していくことも可能です。
相続にかかる費用を抑えることができますし、当事者たちだけで自己解決することができます。
遺産相続の手続きは、弁護士を通さなくても自分たちで調べられます。また、お悩み相談だけならば、地域の市役所などに行って話を聞いてもらえます。
このように、相続手続きは、弁護士や裁判所を介さなければならないわけではなく、自力で手続きを進めることができます。
しかし、すでに何らかのトラブルが起きていて相続が進まない状況にあるならば、自力で手続きを進めるリスクは大きくなります。
順調に進んでいない相続手続きでは、財産の情報開示請求や裁判所を利用した手続きなど、書類準備も含めて、法的な手続きが非常に膨大で煩雑になります。
また、当事者間だけで協議を進めると、特定の人が大きく得をしたり損をしたりする結果になりかねません。
紛争解決の専門家である弁護士に補助を依頼し、抜けや漏れが無いように手続きを進めることをおすすめします。
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相続が進まないまま長引いた場合のデメリット
相続手続きを放置しても直ちにペナルティはありません。しかし、手続きが長引くと、心情的な負担のほかに、様々なデメリットが発生します。
ここでは、相続が長引いてしまった場合のデメリットを4つ紹介します。
- 未分割遺産の管理に支障が出る
- 相続関係が複雑化する
- 相続税の優遇措置が受けられなくなる
- 銀行預金債権が消滅する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.未分割遺産の管理に支障が出る
相続手続きが長引くと、まだ分割できていない遺産の管理に支障が出てきます。
この理由は民法のルールにあります。
民法898条1項:相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
民法|e-Gov法令検索
このように、誰のものか確定していない不動産などの遺産は、相続人全員の共有財産となります。
また、共有財産を管理したり処分したりする場合には、他の相続人の意向を逐一確認する必要があります。(民法249条、251条)
このようなルールから、相続財産の分割が進まなければ、遺産を自由に扱えず、有効活用もできないことがわかります。
2.相続関係が複雑化する
相続手続きが長引くと、遺産分割協議がさらに複雑化する恐れがあります。
さらなる複雑化は数次相続の発生により起こります。
数次相続とは、相続手続きが終わらないうちに相続人が死亡し、新たな相続が発生することです。
このような状況になれば、相続人が増える上にお互いの関係が希薄になります。全く知らない親戚といきなり話し合いをすることの大変さは想像に難くないでしょう。
数次相続が起こると、さらに協議を進めることが難しくなります。
3.相続税の優遇措置が受けられなくなる
相続手続きが長引くと、相続税の優遇措置が受けられなくなります。
財産の優遇措置とは、小規模宅地等の特例や配偶者税額軽減など、財産の取得者の状況に応じて相続税を優遇する制度です。つまり、相続税の申告期限までに取得者が確定しない財産については適用を受けることができません。
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内と相続税法27条に定められています。したがって、相続が始まったことを認識したときから10か月以上相続手続きが長引いてしまうと、相続税の優遇措置が受けられなくなります。
ただし、申告期限を過ぎた場合も、特例に当てはまれば優遇措置を受けられる余地はあります。しかし、この特例に当てはまる人は限られています。
相続税の優遇措置を受けたいならば、10か月以内という期間を目安にしましょう。
4.銀行預金債権が消滅する
相続手続きが長引くと、銀行の預金債権が消滅し、預金を取り出せなくなる恐れがあります。
これは、遺産相続が開始すると、銀行預金は凍結され、預金の入出金ができなくなるからです。
凍結解除には、相続人の確定と所定の手続きが必要です。したがって、遺産分割協議がまとまらなければ銀行預金を取り出すことはできません。
民法のルールにより、債権の時効は10年と定められています。つまり、金融機関に対して預金の払い戻し請求をしないと、預金債権は10年で時効消滅します。
10年経過後に支払に応じるかどうかは、各金融機関によって判断が異なります。
このことから、銀行預金の債権が消滅する前に、分割協議をまとめ、預金を取り出す必要があります。
このように、相続が進まないまま長引いてしまうと、様々なデメリットが発生します。
もし相続手続きがスムーズに進まないと感じたならば、早めに弁護士に相談しましょう。
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